【薬剤師が解説】五十肩(肩関節周囲炎)に処方される薬と市販薬でできること

「腕が上がらない」「夜、痛みで目が覚める」——肩の痛みが続くと、つらいですよね。年齢のせいだから仕方ない、と湿布だけで様子を見ている方も多いのではないでしょうか。

ただ、五十肩と思っていた肩の痛みが、実は別の病気だった、というケースもあります。まずはそこから知っておいてほしいと思います。

この記事でわかること

  • 病院で処方される五十肩の薬にはどんな種類があるか
  • 市販薬でどこまで対応できるか、処方薬との違い
  • 自己判断で様子を見るのが危険なケース

結論を先に

肩の痛みは、五十肩以外の病気(腱板断裂や石灰性腱炎など)が隠れていることがあり、レントゲンやMRIで見分ける必要があります。湿布や市販の鎮痛薬だけに頼って自己判断で様子を見続けるのはおすすめできません。まずは整形外科を受診し、診断を受けたうえで治療を考えましょう。

執筆:薬剤師 しまさ(調剤薬局勤務)

五十肩(肩関節周囲炎)とは?

五十肩は正式には「肩関節周囲炎」といいます。中年以降、特に50歳代に多くみられ、肩関節を支える骨・軟骨・腱などの加齢変化がきっかけで、肩関節のまわりに炎症が起こると考えられています。

主な症状は、肩関節の痛みと動かしにくさです。動かすと痛むのですが、痛いからといって動かさずにいると、関節を包む袋(関節包)などが癒着し、かえって動きが悪くなってしまうことがあります。これを拘縮(凍結肩)といいます。夜、寝返りで痛みが強まり、眠れなくなる方もいます。

炎症期 痛みが強い (夜間痛も) 拘縮期 痛みは落ち着くが 動きにくさが残る 回復期 徐々に 動くようになる

図:五十肩の経過は、一般的にこの3段階に分けて説明されることが多いとされています

ここで知っておいてほしいのが、「肩が痛い」だけでは五十肩かどうか判断できないということです。日本整形外科学会の資料では、圧痛の部位や肩の動きを診察したうえで、レントゲン・MRI・関節造影検査・超音波検査などを使い、「石灰(沈着)性腱炎」(急に激痛が生じる別の病気)や「腱板断裂」「上腕二頭筋長頭腱損傷」といった、見た目や症状が似ている他の病気ではないかを見分けてから治療方針を決めるとされています。これらは五十肩とは治療方針が変わってくるため、自己判断で湿布だけを続けるより先に、一度きちんと診断を受けることが勧められます。
出典:日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」

病院ではどんな薬が処方される?

日本整形外科学会の資料には、治療について次のように書かれています。

「急性期には、三角巾、アームスリングなどで安静をはかり、消炎鎮痛薬の内服、注射などが有効です。急性期をすぎたら、温熱療法(ホットパック、入浴など)や運動療法(拘縮予防や筋肉の強化)などのリハビリを行います」

ここでは、実際によく使われる薬を4つのタイプに分けてご紹介します。

飲み薬 (NSAIDs) 貼り薬 (湿布・テープ) 注射 (ステロイド) 注射 (ヒアルロン酸)
タイプ薬の名前どんな薬?
飲み薬(NSAIDs)ロキソプロフェン など炎症を抑えて痛みをやわらげる。痛みが強い時期に使われる
貼り薬(NSAIDs)モーラステープ など患部に直接貼って炎症・痛みをやわらげる
ステロイド注射ケナコルト-A など肩関節やその周囲に直接注射し、強い炎症・痛みを抑える
ヒアルロン酸注射アルツディスポ など関節の動きを滑らかにする目的で使われる

それぞれの薬をくわしく解説

ロキソプロフェン(飲み薬)

炎症を抑えるタイプの飲み薬(非ステロイド性消炎鎮痛薬)です。関節リウマチや腰痛症などとあわせて、肩関節周囲炎への使用が効能・効果として認められています。

📋 使い方:通常、1回60mgを1日3回、食後に服用します(頓服の場合は1回60〜120mg)。

⚠ こんな人は使えません

胃・十二指腸潰瘍がある人/重い血液の病気・肝臓の病気・腎臓の病気・心臓の機能低下がある人/この薬にアレルギーが出たことがある人/解熱鎮痛薬でぜんそく発作が起きたことがある人(アスピリンぜんそく)/妊娠後期の人

胃痛や胃もたれなどの副作用が出ることがあるため、胃薬と一緒に処方されることもあります。
出典:ロキソプロフェンナトリウム錠60mg 添付文書

モーラステープ(貼り薬)

ケトプロフェンという炎症を抑える成分を含む貼付剤で、肩関節周囲炎への使用が効能・効果として認められています。

📋 使い方:1日1回、患部に貼ります。

⚠ こんな人は使えません

この薬の成分にアレルギーが出たことがある人/解熱鎮痛薬でぜんそく発作が起きたことがある人/光線過敏症(日光に当たって皮膚が荒れる症状)が出たことがある人/妊娠後期の人

この薬は、他の湿布・貼り薬に比べて光線過敏症のリスクが高いとされています。まれに、貼った部分に紫外線が当たることで強いかゆみを伴う発疹が起こり、重い皮膚症状に至った例も報告されています。使用中はもちろん、はがした後も数日から数カ月は、貼っていた部分を衣服などで日光から守ることが大切です。
出典:モーラステープL40mg 添付文書

ケナコルト-A(ステロイド注射)

トリアムシノロンアセトニドというステロイド成分を、肩関節やそのまわりに直接注射する薬です。添付文書には、関節のまわりの軟らかい組織や腱鞘への注射として「関節周囲炎(非感染性のものに限る)」への使用が効能・効果として明記されており、肩関節周囲炎(五十肩)もこの「関節周囲炎」に含まれるものとして使われています。

📋 使い方:成分量として1回2〜40mgを注射します。同じ場所への注射は、原則として2週間以上の間隔をあけて行うとされています。

⚠ こんな場合は使えません

この薬の成分にアレルギーが出たことがある人/注射する部位(関節や腱鞘のまわり)に感染症がある人/関節がぐらついて不安定な状態にある人/夜間頻尿の薬(デスモプレシン酢酸塩水和物)を使っている人

ステロイドの注射は、飲み薬や貼り薬と違い体への影響が比較的大きく出ることがあるため、次のような副作用に注意するとされています。

  • 注射した部位や体の感染症が悪化しやすくなることがある
  • 糖尿病がある方は血糖値が上がりやすくなることがある
  • 骨がもろくなる(骨粗しょう症)ことや、まれに大腿骨・上腕骨の骨の一部が壊死することがある
  • 腱の近くに繰り返し注射をすることで、腱が切れてしまう(腱断裂)ことがある
  • まれに、じんましんや呼吸のしづらさなど全身に急に出る強いアレルギー反応(ショック)が起こることがある

そのため、同じ場所への頻繁な注射は避け、糖尿病や骨粗しょう症のある方は特に注意しながら、医師の判断のもとで使われます。妊娠中は、治療の必要性が高いと医師が判断した場合に限って使用されます。
出典:ケナコルト-A皮内用関節腔内用水懸注 添付文書(2026年3月改訂第3版)

アルツディスポ関節注(ヒアルロン酸注射)

関節にもともとある成分・ヒアルロン酸を補い、関節の動きを滑らかにする目的で使われる注射です。肩関節周囲炎への使用が効能・効果として認められています。

📋 使い方:肩関節周囲炎の場合、成分量として25mgを1週間に1回、5週間連続で注射します。

⚠ 注意点

関節に直接注射する薬のため、清潔な状態で行う必要があります。5回注射しても症状の改善がみられない場合は、使用の中止を検討するとされています。

ステロイド注射に比べると、体への負担は少ないとされる一方、炎症を強く抑える力はステロイドほど強くないと考えられています(詳しくは次の章で解説します)。
出典:アルツディスポ関節注25mg 添付文書

薬の使い分け|どうやって選ばれている?

「なぜ痛みが強い時期にステロイド注射が使われ、その後ヒアルロン酸注射に変わることがあるのか」——これについて、2024年に発表された研究(複数の薬物療法を比較したネットワークメタ解析、Rheumatology誌)が参考になります。

この研究は、3,252件の論文から条件に合う22件のランダム化比較試験を選び出して分析したものです。結果は次のとおりでした。

  • 関節内へのステロイド注射:リハビリ(理学療法)だけの場合と比べて、12週間後の時点で痛み・肩の動かしやすさの両方が、統計的に意味のある差で改善していた
  • 飲み薬のNSAIDs:リハビリだけの場合と比べて、はっきりした差は見られなかった

ただし、この「飲み薬に差がなかった」という結果は、対象になった研究がわずか2件・44人分と少なく、判断材料としては心もとない規模です。ロキソプロフェンの添付文書自体には肩関節周囲炎への効能・効果が明記されており、実際の診療でも広く使われています。「エビデンスが強くない」ことと「効かない」ことはイコールではない、という点は誤解のないようにしたいところです。

ヒアルロン酸注射については、別の研究(7件のランダム化比較試験・504人分をまとめた解析)で、肩の外旋(外側にひねる動き)の改善には効果がみられた一方、痛みの軽減効果は他の治療と比べて特別優れているわけではない、と報告されています。

ここから見えてくるのは、次のような使い分けの考え方です。

  • 痛みが強い炎症期:まずステロイド注射やNSAIDs(飲み薬・貼り薬)で痛みを抑える
  • 痛みが落ち着き、動きにくさが主体になる拘縮期:ヒアルロン酸注射や運動療法(リハビリ)が中心になることがある

ただし、これらの研究の対象者の多くにはかたよりが生じるリスク(バイアスリスク)が指摘されており、結果は慎重に受け止める必要があるとされています。最終的にどの薬をどう使うかは、症状の経過や体質を見ながら医師が判断します。

市販薬(OTC)で対応できる?

肩こりや軽い肩の痛みであれば、市販薬でも対応できることが多い症状です。処方薬と同じ成分の市販薬もあります。

病院の薬近い市販薬の例ポイント
ロキソプロフェン(飲み薬・貼り薬)ロキソニンSテープ など同じ成分(ロキソプロフェンナトリウム水和物)。ただし市販薬の効能・効果は「肩こりに伴う肩の痛み」であり、「肩関節周囲炎」という病名を対象にしたものではない

ここが処方薬との大きな違いです。市販薬はあくまで「痛みや炎症をやわらげる」ことを目的にしたもので、五十肩かどうかの診断や、他の病気との見分けはできません。腱板断裂や石灰性腱炎が隠れていた場合、市販薬で痛みだけを抑えて様子を見続けると、発見が遅れてしまう可能性があります。

市販薬を使う場合の目安

ロキソニンSテープの添付文書には「4〜5日使用しても症状がよくならない場合は使用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談すること」と記載されています。特に、肩が上がりにくい・夜間に痛みで目が覚めるといった症状がある場合は、この目安を待たずに早めの受診をおすすめします。

注意
妊娠中・授乳中の方は、市販薬であっても使用前に医師・薬剤師に相談することをおすすめします。

こんなときはすぐ病院へ(受診の目安)

次のようなときは、市販薬で様子を見ずに、早めに整形外科を受診してください。

🚩 受診のサイン

  • 転倒やケガのあと、急に腕が上がらなくなった(腱板断裂の可能性)
  • 発熱や、肩の熱感・赤みをともなう
  • 腕にしびれや広がるような痛みがある

五十肩は、他の肩の病気と症状が似ていることが少なくありません。「年齢のせいだから」と自己判断せず、肩の痛みが2週間以上続く場合や、動かしにくさが強い場合は、一度整形外科を受診することをおすすめします。

まとめ

  • 五十肩(肩関節周囲炎)は50歳代に多い、肩関節周囲の炎症による痛み・動かしにくさ
  • 症状が似た別の病気(腱板断裂、石灰性腱炎など)と見分けるため、画像検査での診断が重要
  • 病院では、痛みの強い時期にNSAIDs(飲み薬・貼り薬)やステロイド注射、その後ヒアルロン酸注射や運動療法が使われる
  • 市販薬は「肩こりの痛み」への対応で、五十肩の診断はできない。転倒後の急な挙上不能・発熱・しびれがあれば、市販薬に頼らずすぐに受診を

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療にかわるものではありません。症状が続く場合や気になることがある場合は、医師または薬剤師にご相談ください。

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