「いつもの便秘薬を、もう何年も同じように使っている」——そんな方は多いのではないでしょうか。便秘薬には実にさまざまな種類がありますが、それぞれ体への働きかけ方(作用機序)が異なっています。
実は、自分の便秘が「どんなタイプか」によって、向いている薬・向いていない薬があります。まずはそこから知りましょう。
この記事でわかること
- 便秘のタイプによって、処方される薬がなぜ違うのか
- 新しい機序の便秘薬(グーフィス・アミティーザ・リンゼス)は何が違うのか
- 市販薬でどこまで対応できるか、受診の目安
結論を先に
便秘薬は「便を柔らかくする」「腸を直接動かす」など、薬によって働き方が異なり、自分の便秘のタイプに合った薬を選ぶことが診療ガイドラインでも推奨されています。新しい機序の薬(グーフィス・アミティーザ・リンゼス)については、どの患者にどれが向いているかという明確な使い分け基準は、実はまだ確立していません。同じ市販薬を毎日漫然と使い続けるのは避け、改善しない場合は受診しましょう。
執筆:薬剤師 しまさ(調剤薬局勤務)
便秘とは?
診療ガイドラインでは、便秘は「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責(いきみ)、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と定義されています。
ここで大事なのが、便秘は大きく2つのタイプに分けられるという点です。
図:便通異常症診療ガイドライン2023(慢性便秘症)の分類に基づく整理
市販薬・処方薬とも、便秘薬の多くは「排便回数減少型」を対象にしています。一方の「排便困難型」(いきんでもうまく出し切れないタイプ)には、実は薬による治療そのものがあまり効果的でないことが多く、専門的な検査や、骨盤底の筋肉の使い方を練習するバイオフィードバック療法が中心になります。「薬を変えてもずっと改善しない」という場合、実はこのタイプかもしれません。
出典:便通異常症診療ガイドライン2023(慢性便秘症、日本消化管学会編)
病院ではどんな薬が処方される?
診療ガイドラインでは、便秘の治療は病態(便のタイプ)に応じて段階的に選ばれることが推奨されています。まず生活習慣の改善を行ったうえで、改善しなければ次のような薬が使われます。
| 段階 | 代表的な薬 | どんな薬? |
|---|---|---|
| 第一選択 | 浸透圧性下剤(酸化マグネシウム等) | 腸に水分を引き込み、便を柔らかくする |
| 必要に応じて | 刺激性下剤(ビサコジル等)、整腸剤(酪酸菌等) | 腸そのものを動かす、または腸内環境を整える |
| 改善しない場合 | 新しい機序の薬(エロビキシバット、ルビプロストン、リナクロチド) | 複数の仕組みで水分分泌・腸の動きを助ける |
「便秘は病態生理に沿ったエビデンスに基づいた治療を行うことを推奨する」と、診療ガイドラインでも強く推奨されています。次の章で、それぞれの薬がどんな仕組みで、どんなタイプの便秘に向いているのかを見ていきましょう。
それぞれの薬をくわしく解説
酸化マグネシウム(マグミット等/浸透圧性下剤)
腸の中に水分を引き込み、便を柔らかくして量を増やす薬です。硬い便で出づらいタイプの便秘に向いている、便秘治療の基本となる薬です。
📋 使い方:通常1日2gを食前・食後の3回に分けて、または就寝前に1回服用します。
腎機能が低下している方や高齢の方では、「高マグネシウム血症」という副作用に注意が必要です。吐き気・脈が遅くなる・力が入りにくい・眠気が強いといった症状が出たら、服用をやめてすぐに受診してください。
また、テトラサイクリン系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬、骨粗しょう症の薬(ビスホスホネート製剤)と一緒に飲むと、これらの薬とくっついてしまい、効果が弱まることがあります。服用の時間をずらすなどの対応が必要です。逆に、胃酸を抑える薬(PPI・P-CAB・H2ブロッカーなど)と一緒に飲むと、酸化マグネシウム自体の便を柔らかくする効果が弱まることがあります。
他院で処方されている薬がある場合は、お薬手帳で必ず情報を共有しましょう。
出典:酸化マグネシウム錠添付文書
ビサコジル(コーラック等/刺激性下剤)
大腸の神経に直接働きかけ、弱っている腸の動き(蠕動運動)そのものを強制的に起こす薬です。便を柔らかくするというより、腸そのものの動きが鈍っているタイプの便秘に、直接的に効果を出すタイプです。
📋 使い方:就寝前または排便を予定する数時間前に服用します。
効果が強く、長期間続けて使うと耐性(だんだん効きにくくなる)や習慣性が生じるおそれがあるため、毎日ではなく、頓用または短期間の使用にとどめることが原則とされています。
他の下剤と一緒に使わない、大量に服用しないことも大切です。
出典:診療ガイドライン、コーラック添付文書
酪酸菌(ミヤBM等/整腸剤)
他の薬のように便を直接柔らかくしたり、腸を強制的に動かしたりするのではなく、腸内細菌のバランスを整えることで、穏やかに排便のリズムを改善するタイプの薬です。特定の便秘のタイプに絞った薬というより、腸内環境全体への優しいアプローチといえます。
興味深いことに、この薬の添付文書には「禁忌」も「重大な副作用」も項目自体が設定されていません。それだけ安全性が高いとされる薬ですが、その分、効果は緩やかです。
出典:ミヤBM錠添付文書
新しい機序の薬、どう使い分ける?
従来の薬で改善しない場合、近年登場した新しい機序の薬が検討されます。代表的な3剤を紹介します。
グーフィス(エロビキシバット)
胆汁酸という消化液の再吸収を抑えることで、腸内の胆汁酸を増やし、「水分分泌」と「腸の蠕動運動」を同時に促す薬です。他の薬にはない二重の作用が特徴で、腸の動きそのものが遅くなっているタイプの便秘に、特に向いていると考えられています。
📋 使い方:1日1回10mgを食前に服用します。この薬は腸の中で胆汁酸の動きをブロックすることで効くため、食事の刺激で胆汁酸が腸に出てくる前に、あらかじめ薬が効いている状態にしておく必要があります。そのため「食前」に服用するよう定められています。
アミティーザ(ルビプロストン)
小腸の粘膜に働きかけて水分の分泌を促す薬です。幅広いタイプの便秘に効果が期待できます。
📋 使い方:1回24μgを1日2回、朝食後・夕食後に服用します。グーフィスとは逆に「食後」の服用です。空腹時に飲むと血液中の薬の濃度が上がりすぎて、吐き気が強く出やすくなるため、食後に服用することで吐き気を抑えています。
妊娠中、または妊娠している可能性がある方は使用できません(動物実験で流産の報告があるため)。
リンゼス(リナクロチド)
水分の分泌を促すと同時に、腸の痛みを感じやすくなっている状態(内臓の知覚過敏)を和らげる働きもあわせ持つ薬です。3剤の中で唯一、便秘型過敏性腸症候群(お腹の痛みを伴うタイプの便秘)にも使える効能を持っています。
📋 使い方:1日1回0.5mgを食前に服用します(0.25mgに減量することもあります)。
重い下痢が起こることがあるため、漫然と使い続けず、定期的に医師が必要性を確認しながら使う薬とされています。
出典:便通異常症診療ガイドライン2023(慢性便秘症)
市販薬(OTC)で対応できる?
酸化マグネシウムやビサコジルは、市販薬にも同じ成分が使われています。市販の便秘薬(コーラック等)の添付文書には、次のように明記されています。
「1週間位服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください」と定められています。また、他の下剤との併用や大量の服用はしないよう注意されています。制酸剤や牛乳と一緒に飲むと、腸で溶けるよう工夫された成分がうまく働かなくなることがあるため、服用の前後1時間は避けましょう。
一方、グーフィス・アミティーザ・リンゼスといった新しい機序の薬には、市販薬に相当する選択肢がありません。これらはいずれも医師の判断のもとで使う処方薬です。
こんなときはすぐ病院へ(受診の目安)
次のようなときは、市販薬に頼らず医療機関を受診してください。
🚩 受診のサイン
- 市販薬を1週間使っても症状がよくならない
- 酸化マグネシウムを服用中に、吐き気・脈が遅くなる・力が入りにくい・強い眠気が出た
- いきんでもうまく出し切れない感じが続く(薬が効きにくい「排便困難型」の可能性)
- 刺激性下剤(コーラック等)を、毎日のように長期間使い続けている
- 他の病気で治療中、または複数の薬を飲んでいる
特に、いきんでもすっきり出し切れない感じが続く場合は、薬の種類を変えるだけでは解決しないタイプの便秘であることがあります。自己判断で市販薬を使い続ける前に、一度専門的に相談することをおすすめします。
出典:便通異常症診療ガイドライン2023(慢性便秘症)、各薬剤添付文書
便秘が続くと、いきみによって痔につながることもあります。気になる方は痔(いぼ痔・きれ痔)に処方される薬と市販薬で対応できるケースもご覧ください。
まとめ
- 便秘は「排便回数減少型」と「排便困難型」に大別され、薬が効きやすいのは主に前者。診療ガイドラインも、便のタイプに応じた治療を推奨している
- 酸化マグネシウム(便を柔らかくする)とビサコジル(腸を直接動かす)は仕組みが違い、市販薬にも同じ成分がある
- 新しい機序の薬(グーフィス・アミティーザ・リンゼス)は、機序から向いていそうなタイプは推測できるが、明確な使い分け基準はまだ確立していないというのが正直なところ
- 市販薬を1週間使っても改善しない、高マグネシウム血症の症状が出た、いきんでも出し切れない感じが続く場合は、自己判断を続けず受診を
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療にかわるものではありません。症状が続く場合や気になることがある場合は、医師または薬剤師にご相談ください。
参考文献(出典)を見る
- 日本消化管学会編.便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症.南江堂.https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00812.pdf
- 酸化マグネシウム錠 添付文書.医薬品医療機器情報提供ホームページ
- グーフィス錠5mg 医薬品審査報告書(食前投与の設定根拠).PMDA
- アミティーザカプセル24μg 添付文書.日経メディカル処方薬事典
- リンゼス錠0.25mg 添付文書.日経メディカル処方薬事典
- ミヤBM細粒/錠 添付文書(2022年11月改訂第1版).医薬品医療機器情報提供ホームページ
- コーラック 添付文書.大正製薬公式PDF


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