【薬剤師が解説】逆流性食道炎・慢性的な胸焼けに処方される薬と市販薬でできること

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「食後に胸のあたりがカーッと熱くなる」「すっぱいものが喉まで上がってくる」——こうした胸焼けが続くと、食事のたびに憂うつになりますよね。年齢のせいか、食べ過ぎのせいか、と市販の胃腸薬でごまかしている方も多いのではないでしょうか。

この胸焼け、実は「逆流性食道炎」かもしれません。実は2025年、日本で初めて「PPI」という強力な胃薬が市販でも買えるようになりました。処方薬と市販薬で何が同じで何が違うのか、まずはそこから知っておいてほしいと思います。

この記事でわかること

  • 逆流性食道炎で処方される薬にはどんな種類があるか
  • 2025年に登場した市販のPPIでどこまで対応できるか、処方薬との違い
  • 市販薬で様子を見ていい期間と、受診が必要なサイン

結論を先に

2025年、日本で初めて処方薬と同じ系統の「PPI」が市販薬(要指導医薬品)として買えるようになりました(パリエットS・タケプロンS)。ただし市販のPPIは「2週間を超えて使い続けない」という上限が定められており、これは病院で処方されたPPIを使った期間とも合算されます。より効果の強いP-CAB(ボノプラザン)は、2026年時点ではまだ市販化されていません。吐血や飲み込みにくさがある場合は、市販薬に頼らず早めに受診しましょう。

執筆:薬剤師 しまさ(調剤薬局勤務)

逆流性食道炎とは?

胃の中の酸を含んだ内容物が食道に逆流することを「胃食道逆流」といいます。この逆流によって、食道の粘膜に傷がついたり、胸焼けなどの煩わしい症状が起きたりする病気をまとめて「胃食道逆流症(GERD)」と呼びます。

GERDは、内視鏡検査で食道の粘膜に傷(びらん)が見つかる「逆流性食道炎」と、傷はないのに症状だけがある「非びらん性逆流症(NERD)」の2つに分けられます。日本消化器病学会の診療ガイドラインでも、この2つは治療への反応や薬の効き方が異なるとされています。

逆流性食道炎は、内視鏡でみた粘膜の傷の程度によって「ロサンゼルス分類」という重症度に分けられ、傷が軽いGrade A・Bを「軽症」、傷が広い範囲に及ぶGrade C・Dを「重症」として、治療方針が変わってきます。

胃食道逆流症(GERD) 逆流性食道炎 内視鏡で食道粘膜に 傷(びらん)がみえる 非びらん性逆流症(NERD) 傷はないが胸焼け等の 症状がある

図:胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021の分類に基づく整理

治療の目的は、症状をコントロールして生活の質(QOL)を改善することに加え、出血や食道が狭くなる(狭窄)といった合併症を防ぐことです。国内の多施設研究では、逆流性食道炎の患者のうち出血が9.0%、狭窄が3.4%にみられ、高齢であることや、ロサンゼルス分類Grade B以上の重症度であることがそのリスクを高めると報告されています。
出典:胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021(改訂第3版)

病院ではどんな薬が処方される?

代表的な処方パターンを、症状の程度別にご紹介します。

症状の程度代表的な薬どんな薬?
軽症の逆流性食道炎PPI(ランソプラゾール等)、P-CAB(ボノプラザン)いずれも胃酸の分泌を強力に抑える薬。第一選択として同格に使われる
重症の逆流性食道炎ボノプラザン(P-CAB)20mg/日より強力かつ速やかに酸分泌を抑える
症状が続く場合の上乗せ消化管運動機能改善薬、漢方薬(六君子湯など)単独では効果は確認されていないが、PPIに重ねて使うことで症状改善の上乗せ効果が期待できる

重症の逆流性食道炎については、国内外のデータから、ボノプラザン20mg/日を4週間投与することが提案されています(ただしこの推奨は「弱」で、根拠となる研究の数もまだ多くありません)。

また、消化管運動機能改善薬や漢方薬は、これ単独で使ってもGERDへの効果を裏付ける根拠はなく、あくまでPPIを服用したうえで、それでも症状が残るときに重ねて使うことで上乗せの改善効果が期待できる、という位置づけです。なお、これらの薬は日本では現在、逆流性食道炎・NERDに対する保険適用がありません。

このほか、症状が出たときの一時しのぎとして、胃酸を中和するアルギン酸塩・制酸薬が使われることもあります。ただし、効果は一時的で、1日に何度も服用する必要があるため、症状が強い方には向かないとされています。

なお、2025年からはPPIの一部が市販薬(要指導医薬品)としても購入できるようになりました。詳しくは「⑤ 市販薬で対応できる?」で解説します。

それぞれの薬をくわしく解説

ランソプラゾール(タケプロン/PPI)

胃酸を作る細胞のポンプの働きをブロックして、胃酸の分泌を強力に抑える薬(プロトンポンプ阻害薬=PPI)です。逆流性食道炎をはじめ、胃潰瘍・十二指腸潰瘍など幅広い酸関連疾患に使われています。

📋 使い方:逆流性食道炎の治療では通常1日1回30mgを服用(8週間まで)。再発を繰り返す場合の維持療法では、1日1回15mgに減量して長期的に使われます。

⚠ 注意したいこと

この薬の成分にアレルギーが出たことがある人や、一部のHIV治療薬(リルピビリン)を使っている人は使えません。長期間の使用で、まれに血液中のマグネシウム濃度が低下することがあるとされています。

高齢の方は低用量から慎重に投与が始められます。
出典:タケプロンOD錠15/30 添付文書

ボノプラザン(タケキャブ/P-CAB)

PPIとは異なる仕組みで胃酸の分泌を抑える、比較的新しいタイプの薬(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー=P-CAB)です。酸に強く分解されにくいため、飲んだその日から十分な効果を発揮するのが特徴とされています。

📋 使い方:逆流性食道炎の治療では通常1日1回20mgを服用(通常4週間、効果不十分なら8週間まで)。維持療法では1日1回10mgに減量します。

⚠ こんな人は使えません

この薬の成分にアレルギーが出たことがある人/一部のHIV治療薬(アタザナビル、リルピビリン)を使っている人(本剤が胃の中の酸性度を変えることで、これらの薬の吸収が悪くなるため、併用できません)

PPIと同様、長期間の使用でまれに血液中のマグネシウム濃度が低下することがあるとされています。
出典:タケキャブ錠10mg/20mg 添付文書

ファモチジン(ガスター10/OTC H2ブロッカー)

PPI・P-CABとは異なる経路(H2受容体)から胃酸の分泌を抑える薬です。ドラッグストアで購入できる代表的な市販薬で、胃痛・もたれ・胸やけ・むかつきに使われます。

📋 使い方:症状が出たときに、成人(15歳以上80歳未満)は1回1錠。1錠で約8時間効果が続くとされ、1日2回までです。小児(15歳未満)・高齢者(80歳以上)は服用できません。

⚠ こんな人は使えません

同じ系統の薬(H2ブロッカー)でアレルギーが出たことがある人/血液・腎臓・肝臓・心臓の病気、ぜんそくなどの免疫系の病気で治療中の人/小児(15歳未満)・高齢者(80歳以上)/妊娠中または妊娠していると思われる人

3日間服用しても症状が改善しない場合は服用を中止して医師・薬剤師に相談すること、2週間を超えて続けて服用しないことが添付文書で定められています(詳しくは後述の「⑤ 市販薬で対応できる?」で解説します)。また、のどの痛み・高熱・原因不明の体重減少・持続する腹痛がある場合は、この薬が症状を隠してしまい、重い病気の発見が遅れるおそれがあるとして、服用前の相談が呼びかけられています。
出典:ガスター10 S錠 添付文書

ラベプラゾール(パリエットS/OTC PPI)

2025年6月、日本で初めてPPIが市販薬(要指導医薬品)として発売されました。それがこのパリエットSです。成分は処方薬のパリエットと同じラベプラゾールで、含まれる量(10mg)も処方薬と同じです。効能・効果は胃痛、胸やけ、もたれです。

📋 使い方:成人(15歳以上)1回1錠を1日1回。2週間を超えて続けて服用しないこととされています。症状が治まれば服用を止め、3日間服用しても改善しない場合は中止して相談します。

⚠ こんな人は使えません

この薬の成分にアレルギーが出たことがある人/リルピビリン塩酸塩を服用している人/服用中は他の胃腸薬を使用しない/授乳中は服用しないか、服用する場合は授乳を避けること

特に大事な注意点:添付文書には「他のプロトンポンプ阻害薬の使用期間も合わせて2週間を超えて続けて服用しないでください」と明記されています。つまり、病院でPPI(タケプロン等)を処方されていた方が、その後に市販のパリエットSやタケプロンSに切り替えて使う場合、両方を使った期間を合計して2週間が上限ということです。「重大な消化器疾患を見過ごすおそれがある」ため、この期間を超える場合は必ず医師の診察を受けるよう求められています。

要指導医薬品のため、薬剤師から対面での説明を受けたうえでの購入が必要で、インターネット等での通信販売はできません。
出典:パリエットS 説明文書(要指導医薬品)

ランソプラゾール(タケプロンs/OTC PPI)

タケプロンSは、2025年8月に発売されたもう一つのPPI市販薬です。成分は処方薬タケプロンと同じランソプラゾールで、含まれる量(15mg)は処方薬の維持療法用量と同じです。効能・効果は胸やけ、もたれ、胃痛です。

📋 使い方:15歳以上1回1錠を1日1回。パリエットSと同様、2週間を超えて服用しないこととされています。

⚠ こんな人は使えません

この薬の成分にアレルギーが出たことがある人/リルピビリン塩酸塩を服用している人/服用中は他の胃腸薬・テオフィリンを含む薬(せき止め・乗り物酔い止め等)・酸化マグネシウムを含む薬(下剤等)を使用しない/授乳中は服用しないか、服用する場合は授乳を避けること

この薬も、パリエットSと同じく「他のプロトンポンプ阻害薬と合わせて2週間を超えて服用しない」という注意が添付文書に明記されています。要指導医薬品のため、薬剤師からの説明を受けたうえでの購入が必要です。
出典:タケプロンs 説明文書(要指導医薬品)

薬の使い分け|どうやって選ばれている?

「同じ逆流性食道炎でも、軽症と重症で薬が違うのはなぜ?」「新しいP-CABの方が良さそうなのに、なぜ今もPPIが使われるの?」——これには診療ガイドラインが示す、興味深い理由があります。

治療の場面治療ガイドラインでの推奨の強さ
軽症の初期治療PPI・P-CABいずれも第一選択強(エビデンスレベルB)
重症の初期治療P-CAB(ボノプラザン20mg)弱(エビデンスレベルC)
軽症の長期維持療法PPI強・合意率100%(エビデンスレベルC)
軽症の長期維持療法P-CAB弱・合意率86%(エビデンスレベルC)

※「推奨の強さ」は、その治療をどれくらい積極的に勧めるかを表し、「強い」ほど多くの患者に当てはまる推奨です。「エビデンスレベル」は根拠となる研究の質・量を表し、A(強い)・B(中程度)・C(弱い)の順に根拠の強さが下がります。同じ「エビデンスレベルC」でも、推奨の強さが「強」と「弱」で分かれることがあるのは、研究の質だけでなく、効果の大きさや安全性なども合わせて総合的に判断されるためです。

特に面白いのが維持療法(再発予防)の使い分けです。国内で行われた24週間の比較試験では、内視鏡でみた逆流性食道炎の再発率はランソプラゾール15mgで16.8%だったのに対し、ボノプラザン10mgでは5.1%、20mgでは2.0%でした。自覚症状(胸焼け等)が消えた人の割合も、ボノプラザン10mgで87.0%、20mgで94.1%と高い満足度が得られています。内視鏡・自覚症状のいずれで見ても、効果だけを見るとP-CABの方が優れているという結果が出ています。

それでも維持療法でPPIが「推奨」、P-CABが一段階弱い「提案」にとどまっているのは、効果の差ではなく長期間使ったときの安全性データの蓄積量の違いによるものです。PPIは長年使われてきた実績があり、海外の学会レビューでも長期使用時の安全性は高いと評価されています。一方P-CABは2015年から使えるようになったばかりの比較的新しい薬で、長期投与時の安全性についての情報はまだ十分とはいえず、注意深い経過観察が必要とされています。

「新しい薬の方が効果は高いかもしれないが、長く使われてきた薬の方が“実績”という意味での安心材料は多い」——これが、いま同じ病気に2種類の薬が使い分けられている理由です。最終的にどちらを使うかは、症状の経過をみながら医師が判断します。

市販薬(OTC)で対応できる?

逆流性食道炎の市販薬というと、これまではファモチジンなどのH2ブロッカー(ガスター10など)が中心でした。ところが2025年、処方薬と同じ「PPI」という強力な胃酸抑制薬が、日本で初めて市販薬(要指導医薬品)として登場しました。これは大きな変化です。

市販薬成分・分類処方薬との関係使用できる期間
ガスター10ファモチジン(H2ブロッカー)PPIより一段階弱いタイプの酸抑制薬2週間まで
パリエットSラベプラゾール10mg(PPI)処方薬パリエットと同じ成分・同じ量2週間まで
タケプロンsランソプラゾール15mg(PPI)処方薬タケプロンの維持療法と同じ量2週間まで

パリエットS・タケプロンsは、処方薬と同じ有効成分・同程度の量が使われています。診療ガイドラインで示されているとおり、PPIはH2ブロッカーより酸を抑える力が強いとされており(12週間での治癒率はH2ブロッカーが52%、PPIが84%という報告があります)、市販薬でもこのPPIというカテゴリーが選べるようになった、というのが2025年からの大きな変化です。

市販薬を使う場合の目安

3種類とも、添付文書に「2週間を超えて続けて服用しないこと(重篤な消化器疾患を見過ごすおそれがあるため)」と明記されています。ガスター10は「3日間服用しても改善しなければ相談」という目安も設けられています。特にパリエットS・タケプロンsは、「他のPPIの使用期間も合わせて2週間まで」というルールがある点に注意が必要です。たとえば病院でPPIを処方されていた方が、その後に市販のPPIへ切り替えて使う場合は、両方あわせて2週間が上限になります。

また、パリエットS・タケプロンsはいずれも「要指導医薬品」に指定されており、薬剤師から対面で説明を受けたうえでの購入が必要です(インターネットなどの通信販売では購入できません)。妊娠中の方や、他の胃腸薬をすでに使っている方は、市販薬であっても服用前に医師・薬剤師に相談するよう添付文書で呼びかけられています。授乳中の方は、いずれの薬も服用しないか、服用する場合は授乳を避けることとされています。

なお、より強力なP-CAB(ボノプラザン=タケキャブ)については、2026年時点ではまだ市販化されていません。重症例や長期の再発予防が必要な場合は、引き続き病院での処方が必要です。

こんなときはすぐ病院へ(受診の目安)

次のようなときは、市販薬で様子を見ずに、早めに消化器内科などを受診してください。

🚩 受診のサイン

  • 吐血や、便が黒っぽい(出血の可能性)
  • 食べ物や飲み物が飲み込みにくい、つかえる感じがする(食道が狭くなっている可能性)
  • 原因不明の体重減少がある
  • 市販薬(ガスター10・パリエットS・タケプロンs)を2週間使っても症状が改善しない、または他のPPIと合わせて2週間を超えそう
  • 胸焼けが何年も続いている

診療ガイドラインによると、逆流性食道炎では出血や食道の狭窄(せまくなること)を合併することがあり、国内の調査では出血が9.0%、狭窄が3.4%の患者にみられたと報告されています。高齢であることや、粘膜の傷が広い重症例であることがそのリスクを高めるとされています。また、強い胸焼けが20年以上続いている場合、食道の粘膜が変化する「バレット食道」や、まれに食道がんのリスクが高まるとの報告もあります。「たかが胸焼け」と自己判断せず、気になる症状が続く場合は一度受診することをおすすめします。

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まとめ

  • 逆流性食道炎(食道の粘膜に傷がある)とNERD(症状のみ)は、いずれも胃食道逆流症(GERD)に含まれ、治療への反応が異なる
  • 軽症の初期治療はPPI・P-CABいずれも第一選択。維持療法ではPPIが「推奨」、より新しいP-CABは効果面では優れる可能性がありつつも安全性実績の面から一段階弱い「提案」という位置づけ
  • 2025年から、処方薬と同じPPI(パリエットS・タケプロンs)が市販薬(要指導医薬品)としても購入可能に。ただし「2週間まで」「他のPPIと合算」という使用制限がある
  • より強力なP-CAB(ボノプラザン)はまだ市販化されておらず、重症例や長期の再発予防には引き続き処方薬が必要
  • 吐血・飲み込みにくさ・原因不明の体重減少があれば、市販薬に頼らず早めに受診を

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療にかわるものではありません。症状が続く場合や気になることがある場合は、医師または薬剤師にご相談ください。

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