【薬剤師が解説】こむら返り(足のつり)に処方される薬と市販薬でできること

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夜中、ふくらはぎが突然つって、痛みで目が覚める——「こむら返り」は多くの人が経験する、身近だけれどつらい症状です。「年のせいかな」「疲れてるだけかな」と、市販の漢方薬でその場をしのいでいる方も多いのではないでしょうか。

実はこむら返りの薬は、処方薬も市販薬も同じ漢方薬が使われることがほとんどです。ただし、その「効き目」については、正直にお伝えしたいことがあります。まずはそこから知っておいてください。

この記事でわかること

  • こむら返りで処方される薬にはどんなものがあるか
  • 市販薬でどこまで対応できるか、処方薬との違い
  • 頻繁に繰り返す場合に考えられる原因と、受診の目安

結論を先に

こむら返りには、病院でも薬局でも「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」という同じ漢方薬が第一選択として使われます。「よく効く」という評判が広く知られていますが、質の高い比較試験による裏付けはまだ十分とはいえません。また、脱水や運動のしすぎなど日常的な原因のほか、頻繁に繰り返す場合は別の病気が隠れていることもあります。心臓病のある方は市販薬を使えないので注意が必要です。

執筆:薬剤師 しまさ(調剤薬局勤務)

こむら返りとは?

こむら返りは、筋肉が自分の意思とは関係なく、持続的にぎゅっと縮こまってしまう状態です。医学的には「筋痙攣(きんけいれん)」と呼ばれ、多くの場合強い痛みを伴います。米国神経学会の報告では、高齢者の50〜56%が経験し、その半数は週1回以上の頻度で起きているとされています。

原因がはっきりしないものは「特発性筋痙攣」と呼ばれ、ふくらはぎや足に最も多く、夜間に起こりやすいのが特徴です。同学会の報告書には「運動にかかわる神経や筋肉が、病気によってであれ、脱水や激しい運動といった生理的な負荷によってであれ、ストレスを受けているときに痙攣は起こりやすくなる」と記載されており、特に病気がなくても、脱水や運動のしすぎ・筋肉の疲労だけでも頻繁に起こりうることがわかります。

一方で、末梢神経の障害や、血液中のマグネシウム・カルシウムが少ない状態、甲状腺機能低下症、腎臓や肝臓の機能低下が背景にある場合もあるとされています。妊娠後期の方や、マラソンなど激しい運動をする方にも多くみられます。
出典:American Academy of Neurology「Assessment: Symptomatic treatment for muscle cramps」(2010年)

病院ではどんな薬が処方される?

日本の医療機関でこむら返りの治療として処方される薬は、多くの場合「芍薬甘草湯」という漢方薬です。

タイプ代表的な薬どんな薬?
第一選択(漢方薬)芍薬甘草湯芍薬と甘草の2種類の生薬からなる漢方薬。筋肉の異常な収縮をゆるめる

海外では、キニーネという薬の有効性を示す研究報告もありますが、重篤な血液の副作用が報告されており、米国では2006年に食品医薬品局(FDA)が市販薬としての使用に注意を呼びかけました。日本ではこむら返りの治療としてキニーネが一般的に使われることはなく、芍薬甘草湯が中心となっています。

それぞれの薬をくわしく解説

芍薬甘草湯(処方薬)

芍薬(しゃくやく)と甘草(かんぞう)という2つの生薬だけからなるシンプルな漢方薬です。急に起こる筋肉のけいれんを伴う痛みに対して効能・効果が認められています。

📋 使い方:通常、1日7.5gを2〜3回に分けて、食前または食間に服用します。つったとき・つりそうなときだけ頓服として使われることもあります。

⚠ 注意したいこと

アルドステロン症と診断されている方は使用できません。含まれる「甘草」の作用で、むくみや血圧上昇、血液中のカリウムが減る「偽アルドステロン症」という副作用が起こることがあり、量が多いほど・使う期間が長いほどリスクが高まるとされています。そのため、治療上必要な最小限の期間にとどめることが大切です。

むくみや体のだるさ、血圧の上昇など、いつもと違う症状に気づいたら、自己判断で使い続けず医師・薬剤師に相談してください。
出典:ツムラ芍薬甘草湯エキス顆粒(医療用)添付文書

芍薬甘草湯は実際どれくらい効くのか

「芍薬甘草湯は足がつったらすぐ効く」という話は広く知られています。インターネット上のクリニックの解説などでは「有効率60〜100%」という数字もよく紹介されています。

ただ、これらの数字の多くは、薬を使わなかった場合(プラセボ)と比較していない、古いタイプの臨床試験に基づくものが多いと考えられます。「使う前」と「使った後」を比べただけでは、自然に症状が軽くなった分まで薬の効果として数えてしまう可能性があるためです。

そこで、質の高い比較試験だけを集めた2020年のシステマティックレビュー(複数の研究を体系的にまとめた報告)を見てみると、また違った実像が見えてきます。この研究がランダム化比較試験の対象として見つけられたのは、こむら返り全般ではなく肝硬変の患者と、腰部脊柱管狭窄症の患者を対象にした、わずか3件の研究だけでした。

比較結果統計学的にみると
芍薬甘草湯 vs プラセボ(肝硬変患者)オッズ比1.27信頼区間が1をまたぎ、明確な差とはいえない
芍薬甘草湯 vs 筋弛緩薬エペリゾン(腰部脊柱管狭窄症患者)オッズ比2.86信頼区間の下限が1に近く、ぎりぎり有意とはいえない

このレビューの著者たちも、研究ごとのばらつきが大きく件数も少ないため、数値を統合した解析(メタアナリシス)はできなかったと述べています。

誤解のないように付け加えると、これは「芍薬甘草湯が効かない」という意味ではありません。効能・効果として承認されている事実、そして多くの人が実感してきた速効性は変わりません。ただ、「質の高い比較試験による裏付けは、まだ十分に蓄積されていない」というのが正直なところです。今後、こむら返りそのものを対象にした、より大規模な比較試験が期待されます。
出典:Ota S, et al. Effect of Shakuyaku-kanzo-to in patients with muscle cramps: A systematic literature review. J Gen Fam Med. 2020.

市販薬(OTC)で対応できる?

芍薬甘草湯は、ドラッグストアでも市販薬(第2類医薬品)として購入できます。処方薬と同じ生薬からできており、こむらがえり・筋肉のけいれん・腹痛・腰痛に効能・効果が認められています。

処方薬市販薬(OTC)
1日の服用量7.5g(2〜3回に分割)3.75g(1回1包を1日2回)
目安医師の判断による5〜6回服用しても改善しなければ中止

市販薬は処方薬のおよそ半分の量です。添付文書には、次のように明記されています。

市販薬を使う場合の目安

「5〜6回服用しても症状がよくならない場合は服用を中止し、医師、薬剤師または登録販売者に相談してください」と定められています。また「症状があるときのみの服用にとどめ、連用しないこと」ともされており、毎日の習慣として飲み続ける薬ではありません。

⚠ こんな人は使えません

心臓病の診断を受けている人は服用できません。医師の治療を受けている人、妊娠中の方、高齢の方、むくみ・高血圧・腎臓病のある方は、服用前に医師・薬剤師に相談することとされています。
出典:ツムラ漢方芍薬甘草湯エキス顆粒 添付文書

こんなときはすぐ病院へ(受診の目安)

次のようなときは、市販薬だけに頼らず、医療機関を受診してください。

🚩 受診のサイン

  • 市販薬を5〜6回使っても症状がよくならない
  • 週に何度も、あるいは長期間にわたって繰り返す
  • 心臓病の診断を受けている(市販薬は使用不可)
  • 糖尿病・腎臓病・肝臓病・甲状腺の病気など、他の病気の治療を受けている
  • むくみや血圧の上昇など、いつもと違う症状が出た

こむら返りを頻繁に繰り返す場合、背景に末梢神経の障害や、血液中のミネラルバランスの乱れ、甲状腺機能低下症、腎臓・肝臓の機能低下が隠れていることがあるとされています。一方で、脱水や運動のしすぎのように、水分補給や休養で改善する日常的な原因であることも少なくありません。「毎回同じ薬でしのぐ」前に、一度その原因を医師に相談してみることをおすすめします。
出典:American Academy of Neurology「Assessment: Symptomatic treatment for muscle cramps」

まとめ

  • こむら返りには、病院でも薬局でも同じ「芍薬甘草湯」という漢方薬が第一選択として使われる
  • 「有効率60〜100%」という評判があるが、質の高い比較試験による裏付けはまだ十分ではない。効かないわけではなく、エビデンスの蓄積がこれからという段階
  • 市販薬は処方薬のおよそ半分の量。「5〜6回使っても改善しなければ相談」が目安で、連用しないことが前提
  • 心臓病のある方は市販薬を使えない。頻繁に繰り返す場合は背景疾患の可能性もあるため、自己判断でしのぎ続けず受診を

この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療にかわるものではありません。症状が続く場合や気になることがある場合は、医師または薬剤師にご相談ください。

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