「頭の片側がズキンズキンと脈打つように痛む」「動くとひどくなる」「吐き気もある」——こうした頭痛に、毎回市販の頭痛薬でなんとかしのいでいる方は多いのではないでしょうか。
実は、その頭痛が「片頭痛」だった場合、痛みの強さによって「市販の頭痛薬でよいケース」と「片頭痛専用の薬(トリプタン)で早めに対処したほうがよいケース」があります。まずはそこから知っておいてください。
この記事でわかること
- 市販の頭痛薬(NSAIDs・アセトアミノフェン)と、病院で処方されるトリプタンは何が違うのか
- 痛みの強さによって、どちらを選ぶべきかの考え方
- 頭痛薬の飲みすぎがかえって頭痛を招くことがある、というリスク
結論を先に
片頭痛の治療は「痛みが日常生活にどれくらい支障をきたしているか」で選ぶ薬を変えるのが基本です。軽度〜中等度で市販薬・一般的な鎮痛薬から始め、寝込むほど強い・生活に支障が大きい場合は最初から片頭痛専用のトリプタンを使うことが提案されています。ただし、痛み止めは月に何度も使い続けると、かえって頭痛の原因になることがあります(薬物乱用頭痛)。特にトリプタンは少ない回数でもリスクになるため、使用頻度には注意が必要です。
執筆:薬剤師 しまさ(調剤薬局勤務・現役薬剤師)
① 片頭痛とは?
片頭痛は、頭の片側または両側がズキンズキンと脈打つように痛む頭痛で、日本人の約8.4%が経験しているとされています。動くと痛みが悪化する、吐き気を伴う、光や音に敏感になるといった特徴があります。
この頭痛の大きな特徴は、「日常生活への支障の程度」に個人差が大きいことです。少し我慢すれば過ごせる方もいれば、寝込んでしまうほどつらい方もいます。頭痛の診療ガイドラインでは、この支障度に応じて治療薬を選ぶ「層別治療」という考え方が基本とされています。
② 病院ではどんな薬が処方される?
片頭痛の急性期(発作が起きたとき)の治療薬には、大きく分けて次の2種類があります。
| タイプ | 代表的な薬 | どんなときに使う? |
|---|---|---|
| 一般的な鎮痛薬(NSAIDs・アセトアミノフェン) | ロキソプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェン | 軽度〜中等度の頭痛。市販薬にも同じ成分がある |
| トリプタン(片頭痛専用の薬) | スマトリプタンなど | 日常生活に支障が大きい、一般的な鎮痛薬で効果が不十分な頭痛 |
「まず市販薬でも使われている一般的な鎮痛薬から」「効果が乏しければ、あるいは最初から症状が重ければトリプタンへ」という段階を踏むのが基本的な考え方です。
③ それぞれの薬をくわしく解説
NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン・ナプロキセンなど)
炎症や痛みの原因物質(プロスタグランジン)の生成を抑えることで、痛みを和らげる薬です。頭痛の診療ガイドラインでは、イブプロフェン・ナプロキセンは複数の臨床試験で効果が確認されている一方、ロキソプロフェンは日本国内でよく使われているものの、大規模な臨床試験のデータはまだ少ないとされています(ただし、これは効果が弱いという意味ではなく、単に試験数が少ないためです)。
実は、処方薬のロキソニン(ロキソプロフェン)の効能・効果には「頭痛」という病名の記載はありません。ただし、これは「本来使ってはいけない」という意味ではなく、健康保険の審査機関(社会保険診療報酬支払基金)が「片頭痛・緊張型頭痛への処方を審査上認める」と正式に示している、確立した使い方です。
NSAIDsに共通する注意点として、消化性潰瘍のある方、重い肝臓・腎臓・心臓の病気がある方、アスピリンで喘息発作を起こしたことがある方などは使用できません。妊娠後期の方も使用できません。
アセトアミノフェン
NSAIDsとは異なる仕組みで痛みを和らげる薬で、胃への負担が少ないとされ、他の持病がある方にも比較的使いやすい薬です。ただし、重篤な肝障害のある方は使用できません。また、風邪薬などの市販薬にもアセトアミノフェンが含まれていることが多く、痛み止めと風邪薬を同時に使うと知らないうちに使いすぎてしまうことがあるため注意が必要です。
トリプタン(スマトリプタンなど)
NSAIDsやアセトアミノフェンとは全く異なる仕組みの薬で、片頭痛の原因と考えられている脳の血管の拡張や炎症を直接おさえます。効能・効果に「片頭痛」と明記されている、片頭痛専用の治療薬です。頭痛が始まってから服用し、効果が不十分なときは2時間以上あけて追加投与できますが、1日の総量には上限があります。
トリプタンは血管に作用する薬のため、心筋梗塞や狭心症などの心臓の病気がある方、脳卒中の既往がある方、コントロールされていない高血圧の方などは使用できません。持病がある方は必ず医師に伝えてください。
④ 薬の使い分け|どうやって選ばれている?
頭痛の診療ガイドラインでは、「アセトアミノフェン単剤・NSAIDs単剤は安全性が高く安価で、軽度〜中等度の片頭痛発作への第一選択薬として推奨される」とされています。一方で、「日常生活に支障をきたすような片頭痛発作では、NSAIDsよりもトリプタンを使用することが提案されている」ともされています。
つまり、痛みの強さと生活への影響の大きさが、薬選びの一番の分かれ目です。
| 頭痛の程度 | 考え方 |
|---|---|
| 軽度〜中等度(我慢すれば普段どおり過ごせる) | NSAIDsやアセトアミノフェンから開始 |
| 重度(寝込んでしまう、動けない) | 最初からトリプタンの使用も検討 |
トリプタンはNSAIDsに比べて頭痛が消えるまでの効果や再発しにくさで上回るとされていますが、副作用が出やすい面や、薬の価格が高い面もあります。「効果が高いから誰にでもトリプタンが正解」というわけではなく、持病や生活状況、痛みの強さに応じて医師が総合的に判断するものです。
⑤ 市販薬(OTC)で対応できる?
市販の頭痛薬(ロキソニンS、イブなど)には、処方薬と同じNSAIDs成分が含まれているものが多くあります。軽度〜中等度の片頭痛であれば、市販薬でも十分に対応できる場合があります。
ただし、痛み止めは使いすぎるとかえって頭痛の原因になることがあります(薬物乱用頭痛)。アセトアミノフェンやNSAIDsは月に15日以上、トリプタンは月に10日以上の使用が3ヵ月続くと、この状態に該当する可能性があります。「毎週のように頭痛薬に頼っている」という方は、一度医療機関に相談することをおすすめします。
トリプタンは片頭痛専用の治療薬のため、市販薬に相当する成分はありません。
⑥ こんなときはすぐ病院へ(受診の目安)
次のような場合は、市販薬で様子を見ず、早めに医療機関(頭痛外来・神経内科等)を受診してください。
- 今までに経験したことのない、突然の激しい頭痛
- 頭痛に加えて、手足のしびれ・ろれつが回らない・意識がもうろうとするなどの症状がある
- 市販薬・処方薬を月に何度も使わないと過ごせない
- 頭痛の頻度や程度がだんだん強くなっている
- 心臓や脳の病気の既往があり、トリプタンの使用を検討したい
まとめ
- 片頭痛の治療は「痛みが日常生活にどれくらい支障をきたしているか」で薬を選ぶのが基本の考え方です
- 軽度〜中等度はNSAIDs・アセトアミノフェン、日常生活に支障が大きい場合は片頭痛専用のトリプタンが選択肢になります
- 処方薬のロキソニンに「頭痛」の適応表記がないのは、保険審査上正式に認められた確立した使い方であり、心配する必要はありません
- 痛み止めの使いすぎ自体が頭痛の原因になることがあるため、頻繁に使っている場合は医療機関に相談しましょう
この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療にかわるものではありません。症状が続く場合や気になることがある場合は、医師または薬剤師にご相談ください。
参考文献
- 頭痛の診療ガイドライン2021(日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会編)https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_2021.pdf
- ロキソニン錠60mg 添付文書JAPIC PINS
- ブルフェン錠 添付文書(イブプロフェン)JAPIC PINS
- ナイキサン錠100mg 添付文書(ナプロキセン)PMDA
- カロナール錠 添付文書(アセトアミノフェン)PMDA
- イミグラン錠50 添付文書(スマトリプタン)PMDA
- 社会保険診療報酬支払基金 審査情報提供事例No.141(ロキソプロフェンナトリウム水和物)社会保険診療報酬支払基金


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